許せない!チクショオオオアアアォォアアアオォァァァーーーーーーーーーー!
冒頭から怒りに震えてるオオタクなんですがね。なにに怒っているかと言うと僕自身になんです。
いや。怒りと言うか悲しい。過去の自分がもう許せないんですよ。なんというかですね。過去の僕は勉強もしなかったし、頭も悪かったですからね。自分自身に自信がなかった。例え”正解”を語ろうとしても、勉強のできるヤツに反論されると、『あれ?頭のいい奴がこう言っているから、もしかして間違っているのは自分かも知れない。』そう思ってしまうわけなんです。
日本は民主主義ですから、たとえ間違っているとしても、頭のいい人。つまりどこかの学者が言うことに大衆は流されますから、カラスが黒いと僕が言っても100万人の人が、いや!カラスは白いよ。と言えばカラスは白くなるもんです。
そこで僕は自信がないものですから、学者もそう言っているし大衆もそう言っているからもしかしたらカラスは白いかもしれない。とこうなってしまうわけです。
後々カラスは黒いことがわかってもそこは後の祭り。怒りをぶつけるには日が経ちすぎている。今更そんな事を言われても…。となってしまうわけなんです。
そうこの話は僕が保育園生までさかのぼります。
僕の幼少時代、寝る前に必ず母が世界の童話を読み聞かせてくれていたんです。それこそタウンページぐらいの超分厚い童話の本が家に3本もありましてね。毎日一話読んでも一年では読み切れないぐらいの童話がありました。
毎日僕と弟は世界の童話を聞いて育ったのです。しかし童話って言うのは変な話のオンパレードでしてね。ソーセイジが鼻にくっついてしまうお爺さんの話や、町の坂を転がっていくパンケーキの話とか保育園の僕でもこれは無いな。と言う話ばかりでした。
そのなかで唯一本当っぽい話がありました。それが
『ゾウの鼻はなぜ長い』
イギリスの作家キップリング作の童話で、『ジャンブルブック』の作者としても知られているぐらい動物に詳しい作家が書いた童話でした。ノーベル文学賞も受賞しているからね。これは信ぴょう性が高い。
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『ゾウの鼻はなぜ長い』
むかしむかし、あるところに、ゾウの親子がいました。
もちろん、鼻の短いゾウの親子です。
ある日の事、子ゾウがお母さんゾウに尋ねました。
「あの川に住んでいるワニさんの大好きな食べ物は、なあに?」
するとお母さんゾウは、びっくりした顔で言いました。
「坊や、そんな恐ろしい事を聞くものではありませんよ」
「そうだよ。そんな事を聞いてはいけないよ」
隣にいた、お父さんゾウも言いました。
「うん、わかった。もう聞かないよ」
子ゾウはそう言いましたが、でもどうしても気になったので、後で川にいるワニのところへ言って尋ねました。
「ねえ、ワニさん。あなたの好きな食べ物はなあに?」
するとワニは、
「へっへへへ。オレの好きな食べ物は子ゾウさ。父さんや母さんに聞かなかったのかい?」
と、言って、子ゾウの短い鼻に、
「ガブッ!!」
と、噛みついたのです。
ビックリした子ゾウは体を後ろに引っ張って、ワニの口から鼻を引き抜こうとしました。
しかしワニは鼻に噛みついたまま、なかなか放してくれません。
「ウーン、ウーン、ウーン」
子ゾウが体を後ろへ引っ張りますが、
「ギュー、ギュー、ギュー」
と、ワニも負けじと鼻を引っ張ります。
子ゾウとワニの両方が力一杯引っ張ったので、そのうち子ゾウの鼻がだんだんと伸びていきました。
「もう、離してよ! 痛いじゃないか!」
とうとう子ゾウが怒って、伸びた鼻でワニを引っぱたきました。
ビューーーン。
引っぱたかれたワニは、そのまま遠くへ飛んで行ってしまいました。
こんな訳で、子ゾウの鼻は長くなってしまったのです。
そしてそれから生まれたゾウは、みんな鼻が長くなったという事です。
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そんなわけでですね。象の鼻が長いのはワニに噛まれたからなのです。さぁ明日みんなに自慢しよう!
それから時は経ち僕が小学生になったある日事件が起こりました。
クラスで動物の話が持ち上がったのです。当時同じクラスに頭もよくてお金持ちおまけにイケメンと言う最強小学生のN君がいたんですがね、スネ夫はお金持ちですがイケメンではないので、単純にスネ夫以上、しかも金持ちなので出木杉君よりもハイスペックなヤツでして、しかもクラスで人気もあるという僕が一番嫌いなタイプの奴が自分の知識をはべらかして女子の注目を集めているんですよ。もう女子はメロメロ。あっはーん抱いて!状態になっています。
これは許せないですよね。許しちゃあいけない。完璧な奴なんていないんですよ。ここはひとつ僕がNの知りえない話をしてですね、女子の注目を集めハーレムを作るしかない。いや。もうNなんてどうでもいい。ハーレムを作りたい。
ゾウの鼻ってなんで長いか知ってるか?
僕の全知識を持って戦える動物の知識と言ったらこれしかありません。もちろんNが『知ってるぜ!ワニに噛まれたからだろ!』なんて言ったらもうおしまいですよ。ここはNが知らないことを祈った。
なんだよ言ってみろよ
よし!こいつは知らない!なんか自分が知らない情報を俺が知っているからちょっとムッとしているぜ!勝った!この勝負は俺の勝ちだ!
僕は得意満面でゾウの鼻をワニが噛んで伸びた話をした。どうだ!博識な俺のもとに来いよ女子!おいおい、一気に来るんじゃないぞ。ちゃんと順番よく来るんだ、なに平等に愛してやるさ!
はははっはははははははははははっはははははははっはははは
教室中に笑いが巻き起こった。Y君なんて笑いすぎて呼吸ができなくなっている。なんだこれはこんなはずじゃない。しかも馬鹿にしたような笑いだ。
おっおい!なっ何がおかしいんだ!
オオタクが赤面していると、笑いすぎて涙まで流しちゃっているN君が言った。
ワニ?何それ?そんな話信じているの?いいか、進化論って言うのがあってだな…なんたらかんたら
違う!お前らは無知なだけだ!何も知らないくせに!
オオタクが本気でワニ説を主張すればするほど教室は笑いで包まれる。なぜだ!こんなはずじゃない。俺は本当のことを言っているだけなのに!
なんかもう悔しくてですね。その日は枕を濡らしました。当然怒りの矛先は母に向けられた。何嘘話をしちゃっているの?恥をかいたじゃないか!!どうしたらいいのかわからない母を攻め立てたのだった。
学校ではワニなんて呼ばれたりしてね。童話のせいでひどい目にあいましたよ。
そして時は経ち現代。いろんな知識を詰め込んだ私はゾウの鼻がなぜ長いのか?と言う問いにも完璧に答えられる。
今考えられているのが2パターンありましてね。
鼻が長くなったのは高いところのエサもとれるように進化していった説とたまたま鼻の長いゾウが生まれ、鼻の短いゾウとの生存競争に勝ち鼻の長いゾウのみが生き残ったという逆説。
あの頃僕には知識がなかった。もっと僕に知識があればみんなに笑われずに、バカにされずにいたのに。思えばあのころから僕の心はねじまがったんだ。ピュアだったオオタクはあのころに死んだ。母が嘘の話をし、大人の話は嘘だと疑い、大衆は個人を馬鹿にし自分の優位性を楽しむもの。
あのみじめな頃の自分とは違う。今は知識を蓄え誰にも馬鹿にされないように生きるんだ。
いや~それにしても現代は便利になりました。ネットが普及していろんな情報が5分もあれば見つかる。分厚い辞書なんていらない。ネットさえあればどんどん知識を得られるのだから。
今日も僕はネットで知識を蓄えるのに躍起になっている。電脳世界にダイブし、必要な情報からいらない情報までどんどん頭に詰め込んでいく。
そんなネットの大海原を泳ぐオオタクの前に衝撃の画像が飛び込んできた。
!!!!
僕は奢っていた。パソコンを手に入れ何でも知っているような錯覚に陥っていたんだ。僕は何も間違っていなかった。そうみんなに笑われたから、バカにされたからと自分の意見を曲げたことを恥じよう。自分をなぜ信じられなかったのか…。
しかし胸のつかえはとれ、あの時の僕は間違っていなかった。これからはっ胸を張って言える。
ゾウの鼻はワニが噛んだから伸びたんだ!と。